M&A業界に転職するには?中途採用の難易度や平均年収、やりがい、M&A業界に向いている人などを紹介
M&A業界の仕事に興味がある、M&A業界の企業に転職したいと思っている人も多いでしょう。そんな方のために、この記事では、M&A業界の仕事内容や平均年収、転職難易度、転職のポイントなどを解説します。
未経験からM&A業界への転職はできるのか、重視されるスキルや有利な資格とは何かなども紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
M&A業界とは
M&Aとは企業の合併・統合のことです。大企業の統合や吸収合併はニュースで耳にする機会もあるかと思いますが、最近では少子高齢化による人口減少や経営者の高齢化によって、中小企業の事業承継を目的としたM&Aの需要が高まっています。
M&A仲介会社は、売り手企業と買い手企業をマッチングして企業の合併や吸収に関する交渉の仲介を行い、中立的な立場でM&A成立に向けてサポートを行うのが仕事です。近年は、特に事業承継に悩む高齢の経営者が多くなってきて、M&Aという解決策が選択肢として広がってきています。さらに、設備投資が少なく利益率が高いこともあって、今後も市場規模が拡大し成長が見込まれる業界といえるでしょう。
M&A業界の仕事内容
M&A業界の仕事内容は、買い手企業と売り手企業のそれぞれの目的を最大化できるように、両者の間に入ってM&Aの交渉を進めることです。ただし、立場によって具体的な仕事内容は異なります。ここではM&Aアドバイザリー・M&Aコンサルタント・M&A仲介の仕事内容を見ていきましょう。
M&Aアドバイザリー
M&Aアドバイザリーは、企業のM&Aに関するさまざまな段階で、クライアント企業に専門的なアドバイスやサポートをする仕事です。具体的には、以下のものがあります。
- 買収先・被買収先企業の選定
- デューデリジェンス
- 取引条件の交渉
- 資金調達のサポート
- 資料作成 など
買収企業・売却企業のどちらかの立場になってクライアント企業をサポートし、利益の最大化を目指すのが、M&Aアドバイザリーの役割です。
M&Aコンサルタント
M&Aコンサルタントの仕事内容には、以下のものがあります。
- M&A戦略の立案・策定
- デューデリジェンス
- 取引条件の交渉
- ポストマージャーインテグレーション(通称PMI)の実施 など
M&AアドバイザリーとM&Aコンサルタントの定義はあいまいで、ほとんど同じ意味で使われています。ただし、具体的にはM&AアドバイザリーはM&Aの実行段階で支援することに特化しているのに対して、M&Aコンサルタントは戦略的な視点から幅広くM&Aの支援を行う傾向があります。
M&A仲介
M&A仲介とは、企業の合併や吸収の際に双方の企業の仲介に入り、中立的な立場から支援を行うのが仕事です。具体的な仕事内容は、以下のとおりです。
- 売り手企業の発掘
- 企業価値の算定
- 提案書の作成
- 買い手候補企業の探索や打診
- 条件交渉 など
企業の合併や吸収における条件交渉には財務・税務・法務などの専門知識が必要になるため、当事者同士だけでM&Aを成功させるのは双方に詳しい人材がいない限り不可能です。そこで、M&A仲介企業が間に入って諸々の書類作成や調整を行い、スムーズな企業の合併や買収をサポートします。
FAとの違い
M&A仲介業者とFA(ファイナンシャル・アドバイザリー)は業務内容が近いため、しばしば混同されがちですが、サポート体制に違いがあります。
M&A仲介業者は、売り手企業と買い手企業のマッチングから条件交渉や契約成立まで、双方の間で中立的な立場でサポートを行います。それに対してFAは、売り手企業と買い手企業のどちらかと個別に契約を結び、一方のみのM&Aをサポートします。
つまり、下記のポイントがM&A仲介会社とFAの違いです。
- 売り手企業と買い手企業の双方の間に立ってサポートを行うか
- それぞれの立場でサポートを行うか
FAが売り手企業と買い手企業のそれぞれが自社の利益の最大化を目的として交渉を行うのに対して、M&A仲介業者は双方の利害関係を調整しつつ交渉を行います。このことから、M&A仲介業者のほうがFAに比べてM&Aを成約しやすく、契約成立後の両者の関係が友好的に続く傾向にあります。
M&A業界の平均年収
M&A業界の平均年収は1,300万円ほどで、給与水準の高い業界です。M&A業界の年収が高い理由は、利益率の高いビジネス構造であることや成果報酬型であることが挙げられます。
M&A業界は設備投資が少なく、高い利益率を見込めるコンサルティングビジネスです。取り扱う商材が会社なので、大きな金額が動きます。高額な商材を取り扱っており、利益率が高いため、大きな利益を上げられるビジネスなのです。
そして、M&A業界は成果に見合った報酬を得られる給与体系を採用していることが多く、スキルを磨いて成果を上げれば上げるほどそれに見合ったリターンが得られます。
M&A業界の平均年収ランキング
M&A業界の中でも平均年収が高い企業TOP3は、下記のとおりです。
企業 | 平均年収 | |
第1位 | M&Aキャピタルパートナーズ | 2,478万円 |
第2位 | ストライク | 1,514.9万円 |
第3位 | フロンティア・マネジメント | 1,257.5万円 |
1位のM&Aキャピタルパートナーズは、中堅企業・中小企業を対象にした完全独立系のM&A仲介会社です。検討初期から制約までM&Aアドバイザーが一貫してサポートするのが、特徴です。
2位のストライクは、全国の金融機関や税理士、公認会計士と提携するM&A仲介・M&Aアドバイザリー企業であり、業界トップレベルの経験と実績を誇ります。
3位のフロンティア・マネジメントは、ビジネスや金融、会計など企業経営に関する各分野の専門家で構成された経営支援・M&Aアドバイザリー企業です。高度な専門性を武器に、さまざまな経営課題を総合的に解決します。
M&A業界への転職難易度
M&A業界への転職難易度は、スキルや年代によって異なります。20代であれば地頭の良さなどのポテンシャルを見られることが多いため、M&Aや金融の未経験からの転職でも成功する可能性は十分にあるでしょう。
30代になると、未経験の転職の可能性はかなり厳しくなります。M&A業務未経験でも、経営者やオーナーへの営業として高い実績があったり、M&A仲介における大きな課題としてある「事業承継」関連の業務をやっていたりすれば、30代での転職も可能性があります。
M&A業界に転職する魅力・やりがい
M&A業界は転職市場でも、人気のある業界です。M&A業界に転職する魅力ややりがいを見ていきましょう。
給与水準が高い
M&A業界の一番の魅力は、給与水準の高さです。特にM&Aキャピタルパートナーズは、東洋経済オンラインの「全国の上場企業の平均年収ランキング」で堂々の1位に輝いています。ストライクやフロンティア・マネジメントも、トップ25に入るほどの高水準です。
業界全体に実力主義の風潮があり、給与形態にはインセンティブが採用されています。成果を出せば出すほど収入に直結する仕組みも、M&A業界で働く魅力の1つです。
スケールの大きい仕事ができる
M&A業界は会社の売買を行うため、他の業界に比べて動く金額がかなり高額です。1回の取引で数千万円〜数億円が動くことは珍しくなく、大型案件になると数十億〜数百億円規模になります。
これだけ大きな金額の取引をするのは緊張するかもしれませんが、世の中に与える影響力の大きさにやりがいを感じられるでしょう。
買い手・売り手の両方のクライアントに貢献できる
M&Aを検討する売り手企業の中には、後継者不足による事業承継問題や経営不振などのさまざまな課題を抱えているところもあります。M&Aの仕事は、このような課題を抱える売り手企業の課題を解決して、買い手企業にとっても利益になるようにサポートすることです。売り手・買い手企業双方に喜んでもらえて、日本の多くの企業が抱える日本の社会課題を解決することに貢献できる仕事です。
M&A業界への転職で求められるスキル
M&A業界への転職は求められるスキルが高く、敷居が高いように感じるかもしれません。実際に、M&Aが成約するまでの業務は多岐に渡るため、多様なスキルが求められます。ここでは、どのようなスキルを身に付けていればM&A業界への転職に有利なのかを紹介していきます。
M&Aや財務、経営に関する幅広い知識・スキル
M&A業界でコンサルタントや仲介の立場で仕事をするには、買い手・売り手の双方に利益をもたらすために、経営や財務などの幅広い知識・スキルが求められます。分析力や交渉力も欠かせません。
また、市場動向や法改正など日々変わる事情にも目を向けて、戦略を立てる柔軟性も重要です。クライアントの目的を果たすために、戦略的なアドバイスができるようになる必要があります。
語学力
グローバル化の拡大に伴って、日本国内の企業同士だけでなく、国をまたいだM&Aの需要も高まっています。そこで、ビジネスレベルの英語力を身に付けている人は、M&A業界において価値の高い人材として重宝されます。
ビジネスレベルの英語力とは英語でミーティングが可能なレベルで、TOEICの点数でいうと800点台後半以上です。TOEICなどの客観的に英語力を証明できる資格を取っておくと、選考の際にアピールできて有利でしょう。
金融や会計の知識
M&A業務では、金融や会計に関する専門的な知識が必要とされます。
M&A企業が取り扱う対象は、企業そのものです。買収資金が高額となるため、その取引には外部の金融機関や外部の投資家からの資金調達が必要になることもあります。M&Aには金融が密接に関わるため、金融の知識があるとM&A業界への転職に有利です。
売り手企業の価値やリスクを調査することをデューデリジェンスといいますが、企業価値の分析には、経営状態を測る指標である損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を用います。財務諸表を読み解くためには会計の知識が必須なので、会計の知識はM&A業界への転職において強みになります。
営業力
M&Aへの転職において重視されているスキルの1つが営業力です。これまでに2年以上の営業経験がある人や、経営者との折衝経験がある人が優遇される傾向にあります。
M&A業務のメインはコンサルティングですが、売り手企業と買い手企業をリサーチして案件を創出しないと業務が始まらないので、成果を上げるためには営業力が必要不可欠です。
M&Aは、売り手企業の経営者にとっては自分が経営してきた会社の企業価値を算定し、買い手に引き取ってもらうための大きなイベントです。そのため、少しでも不信感を抱かれたら取り合ってもらえません。信頼感のある立ち振る舞いも、M&A業界で成果を上げるためには大切な要素です。
M&A業界への転職で持っていると有利な資格は?
M&A業界への転職において、入社前に必須な資格はありませんが、簿記2級レベルの会計知識があると有利でしょう。また、選考においては公認会計士や税理士、中小企業診断士などの資格が歓迎条件とされていることが多いです。
さらに、MBAやM&Aエキスパート認定資格もM&A業界へ転職する上で強みとなります。MBAとは、ビジネススクールで経営学の大学院修士課程を終了すると授与される学位です。M&Aエキスパート認定資格は、事業承継・M&Aエキスパート協会(JME)が認定する民間資格になります。
M&A業界への転職事例
弊社サムライソウルを通して転職した方の中には、M&A業界の内定を手にした方も大勢いらっしゃいます。
- 自動車販売店からfundbookに転職
- メガバンクの法人営業からfundbookに転職
- 営業支援会社からみつきコンサルティングに転職
- 生命保険会社の法人営業からバトンズに転職
- 税理士法人からストライクに転職
- 外資IT企業からストライクに転職
- 大手ECの法人営業からストライクに転職
- 人材紹介会社からストライクに転職
- 食品メーカーの営業からfundbookに転職
- ITベンチャーからソーシング・ブラザーズ株式会社に転職
- 人材紹介からエス・エム・エスのM&A仲介部門に転職
- コンサルティング会社から株式会社ストライクに転職
もちろんM&A業界未経験の方も、M&A業界への転職を成功させています。M&A業界への転職を検討している方は、転職体験談もぜひ参考にしてください。
M&A業界への転職がおすすめな人は?
M&A業界は成果報酬制の企業が多く、仕事の成果が収入面に直結する業界です。そのため、向き不向きが他の業界よりも大きいといえるでしょう。ここでは、M&A業界への転職が向いている人、向いていない人の特徴を紹介します。
M&A業界に向いている人
M&A業界の業務に向いている人は次のような特徴を持つ人です。
- 新規開拓営業に苦手意識がない
- 個人の力を試したい
- 事業承継やM&Aに関心を持っている
それぞれ具体的に見ていきましょう。
新規開拓営業に苦手意識がない
M&Aの業務は売り手企業や買い手企業への営業から始まります。特にM&A仲介は電話やDM、直筆の手紙などを使ってアプローチしたい企業経営者に営業し、初回の商談の機会を創り出すことの多い仕事です。まだ面識もない企業経営者へのアプローチは一筋縄に行くものではありません。そのため、相手に信頼してもらえるような営業力のある人材がM&Aのコンサルタント業務に向いています。
個人の力を試したい
M&A業界は、安定した収入を求める人よりも、個人の力で収入を伸ばしたい人に向いています。M&A業界は固定給よりもインセンティブの割合が高いところが多く、目指そうと思えば個人の収入を大きく伸ばすことができる環境です。したがって、自分がどこまで稼げるか挑戦したい人はM&A業界が向いています。
事業承継やM&Aに関心を持っている
少子高齢化や人口の都市部集中による中小企業の後継者不足が問題となっています。こういった問題を解決したいと思っている人は目的意識を持って業務に取り組めて、成長にもつながりやすいため、M&Aの業務に向いています。
M&A業界に向いていない人
反対に、M&Aの業務に向いていない人の特徴は下記のとおりです。
- 安定した収入を求める人
- ワークライフバランスを重視する人
- 営業スキルに自信のない人
3つの特徴を具体的に見ていきましょう。
安定した収入を求める人
基本給よりもインセンティブの割合が高い給与方式になっているため、経験の浅いうちは安定した収入を得るのが難しいでしょう。もちろん、成果を上げられれば高い報酬が得られるのですが、毎月一定の安定した収入を求める人にはM&A業界は向いていません。
ワークライフバランスを重視する人
M&A業界は、M&A市場が成長中であることや、市場全体の課題を解決できるプレイヤーや企業が少ないことから激務となる傾向にあります。働きに見合ったリターンは大きいですが、確実に定時で上がりたい人にはおすすめできません。
営業スキルに自信のない人
M&A業界では営業力と財務・税務・法務の基礎力が重視されます。専門知識に関しては、入社後に身に付けられますが、営業スキルを身に付けておいたほうが良いでしょう。実際に、未経験からM&A業界へ転職した人には、金融機関や保険会社で高い営業成績を納めていた人が多いです。
M&A業界に求められる人材
ここまで、M&A業界に向いている人と向いていない人の特徴を解説しましたが、ここからは実際にM&A業界で求められる人材について解説していきます。
- ホスピタリティを持っている
- 折れない強い心がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ホスピタリティを持っている
M&Aは2社の今後の経営を左右する重要な契約です。M&Aが完了した後も、この2社は1つの企業として引き続き事業を行っていきます。そのためM&Aがどちらかにとって納得のいかないものになると、今後の事業継続に悪影響を及ぼす恐れがあります。
M&Aにおいては、双方が納得する最大限の条件を見極めることが重要です。そのためには、M&Aを支援するあなた自身・あなたの会社の利益だけでなく、M&Aを行う2社のことを徹底的に考えて奉仕できることも大切です。
成長意欲が高い人
M&Aの仕事には財務や法務、労務、金融などの幅広い知識が必要なので、働くには成長意欲が欠かせません。法律や行政の制度、市場動向などは変化するものなので、その度に成長意欲を持って情報を追いかけられる人は、M&A業界でも活躍できるでしょう。
もちろん転職前の今、全ての知識を完璧に持ち合わせる必要はありません。業務を遂行するにあたって自ら勉強できる人は、業界未経験だったとしてもM&A業界に求められる人材といえます。
裁量のある仕事がしたい人
M&A業界では1つの案件で数億円〜数十億円のお金が動く、コンサルタント1人あたりの裁量も大きいのが特徴です。経営や金融などのさまざまな知識を身につけて、結果に対してストイックに行動できる人は、M&A業界にとっても魅力があり活躍できます。
ただし、個人の裁量が大きいため、自己管理できていないとワークライフバランスが崩れる恐れがある点には気を付けましょう。
折れない強い心がある
M&Aをしたい企業はそう簡単に見つかるものではありません。見つかったとしても、あなたと一緒にやろうと意思決定してくれる会社が100%でもないので、最初の仲介契約までにかなり泥臭い営業活動をやっていく必要があります。
また、実際にM&Aを進めるにあたって、なかなか希望条件にマッチする相手先が見つからなかったり、見つかっても話を詰めていく上ですれ違いが生じてうまくまとまらなかったりすることも珍しくありません。そんなときに「もうだめだ」「自分にはできない」と思ってしまっていては、この業界で長く続けるのは難しいです。大変な業務を任せられる業界だからこそ、心の強さは必須といえるでしょう。
中途採用でM&A業界に入る条件
中途採用でM&A業界に入る基本的な条件は、以下の3つだといわれています。
- 大卒
- 2年以上の社会人経験
- 営業経験があり高い成果を出していること
営業といっても、業界が違えばその経験の内容は大きく異なりますが、それぞれのバックグラウンドをM&A業界の仕事に活かすことができれば、転職する際の障害にはなりません。
実際に、サムライソウルを通じてM&A業界に転職をした方の前職はリクルートグループや伊藤忠商事、三菱商事、楽天、大和ハウス工業などとさまざまです。M&Aにおける業務経験は未経験の方も多くいらっしゃいます。特に、日本M&Aセンターは、幅広いバックグラウンドの方を採用している傾向があります。
経験の内容を問わないとはいえ、M&A業界が中途採用の社員に期待するのは即戦力です。即戦力かどうかは、M&Aの仕事に含まれる3つの重要な要素を身に付けているかどうかで評価されます。
3つの重要な要素
M&Aの仕事に含まれる3つの重要な要素は、下記の3つです。
- 新規開拓営業
- トップアプローチ(社長や事業責任者への営業)
- 金融の知識
3つの要素のうちいずれかを経験していれば、書類選考の段階からM&A企業に注目される可能性が高いでしょう。
逆に、ほとんど問題にされないのは学歴です。有名大学を卒業していたり、大学院以上の高い学歴があったりしても重要視されませんし、反対に学歴が理由で採用に至らないということもまずありません。M&A業界の採用では、高学歴である必要はありませんが、多くの企業が応募資格の最終学歴に大卒以上と記載しています。
M&A業界の採用基準
3つの要素を兼ね備えた人材が求められているのは当然として、会社によって3要素のどれをより重視するかは異なります。営業力があれば金融の知識や経験をほとんど問わない会社、金融に関する知識と経験があれば営業力は後から身に付くだろうと考える会社など、さまざまです。
こうした採用の傾向は、経営者の経歴に関係している場合が多く、社内の雰囲気にも大きく影響します。営業力を重要視する会社には人の懐に入っていくスキルを持った人が集まりますし、財務の知識に重きを置いて採用する会社では理論的な仕事の進め方が社内での信頼につながるのです。
自身のキャリアを振り返り、職務経歴書をまとめる際には、新規開拓営業で残した成果や携わった案件の規模、トップアプローチの事例、金融スキルを伝える具体的なプロジェクト内容を数字とともに示し、自分がどの領域に強みを持っているか明確にしましょう。
その上で、M&A仲介の各社が求めるスキルや経験とすり合わせ、入社後に期待されるキャリアにミスマッチが生じないようにしてください。
会社によって、研修に力を入れる日本M&AセンターからOJTで現場経験を積むM&Aキャピタルパートナーズ、ストライクなど入社後の人材育成に大きく違いがあります。
また、新しいスキルを身に付けてもらいたいと考えて、年齢を重視する会社もあります。若い人ほど新しく身に付けたスキルを発揮して現場で活躍できる期間が長くなり、将来会社に貢献する可能性が高い、という評価がされるのです。そういう会社では、30代以上の採用はあまり多くありません。就職活動の際には、こうした考え方や方針が自分に合うかどうかをしっかり見極める必要があります。
M&A業界に転職するポイント
M&A業界は、高い収入が見込めることや、M&Aの需要が高まっていることから転職市場で人気の業界です。即戦力のある経験者が優遇される傾向にあるため、同じ業界から転職する場合と他の業界からの転職する場合では難易度が異なります。
M&A業界経験者が転する場合
同じM&A業界から転職する際のポイントは、前職での経験を活かすことです。
M&A業界からの転職であれば、基本的なスキルは身に付いているはずなので、未経験からの転職よりもハードルは下がります。経験があることが前提で選考が行われるため、選考の際は即戦力として期待されるでしょう。前職での請負案件やその際の自分の活躍を説明できるようにしておくと、自分の能力をアピールしやすいです。
M&A業界未経験者が転職する場合
M&A業界は求められるスキルが高いため、即戦力となる経験者のほうが転職に有利だと思われがちです。しかし、未経験からの転職は不可能ではありません。経験がなくてもポテンシャルを買われて採用されることもあるのです。
実際に、M&Aとは関係のない業界からM&A業界に転職して収入を大きく伸ばしている人も珍しくありません。他業種出身者がM&A業界に転職する際のポイントは下記の2点です。
まずは小規模なM&A仲介会社への転職を目指す
いきなり大手M&A仲介企業への転職はハードルが高くても、小規模な企業でM&Aの経験を積んでから、その経験を武器に大手M&A企業へ転職するのであれば難しくありません。小規模案件は大規模案件に比べて比較的短期間で成約するため、小規模案件に注力するM&A会社では多くの案件を経験できます。
業界未経験の人は、まずは小規模のM&A仲介会社への転職を目指すのが良いでしょう。
転職エージェントの力を借りる
転職エージェントには、さまざまなM&A業界の求人が集まります。M&A仲介企業の中には特定の業界に特化した案件を扱う企業もあるため、M&Aに関しては未経験でも前職の業界のノウハウを業務に生かせることがあるのです。転職エージェントに依頼すれば、自身の経歴や能力を生かせる企業とのマッチングを期待できるでしょう。
M&A業界への面接対策
M&A業界は人気の業界なので、転職活動をする際はしっかり準備をして挑むことが大切です。M&Aキャピタルパートナーズの採用を例に挙げると、選考フローは下記のとおりです。
- 知的能力検査
- 一次面接:部長面接
- ニ次面接:社長面接
- 性格検査
- 三次面接:会食面接
また、面接では下記のような内容を聞かれる可能性が高いので、事前に回答を準備しておきましょう。
- 自己紹介
- 自分の強み・弱い
- M&A業界を志望する理由
- M&A業界の中でも選考企業を志望する理由
- 仕事で困難だったエピソード など
面接官はあなたに質問をして、志望度の高さや適性を見極めています。上記の質問にはスムーズに回答できるように、対策しておくと本番も安心です。なお、応募から内定までの期間は1ヶ月程度です。
M&A業界の中途採用求人例
M&A業界の実際の求人を例に、いくつか紹介します。
M&Aアドバイザリーの求人
企業名 | M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 |
業務内容 |
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必須条件 |
|
平均年収 | 在籍1年超アドバイザー平均年収:4,106万円(2022年9月期) |
M&Aコンサルタントの求人
企業名 | 日本M&Aセンター |
業務内容 |
|
必須条件 | 大学卒業以上
営業事務の経験 |
初年度想定年収 | 700~1,200万円 |
M&A仲介の求人
企業名 | ストライク |
業務内容 | M&Aの対象企業の探索・提案・条件交渉
企業評価の実施、対象企業の分析 買収監査・デューデリジェンスのサポート |
必須条件 | 大学卒業以上 |
初年度想定年収 | 入社2年目:5,000万円
入社3年目:1億円以上 |
M&A業界への転職に関するQ&A
ここからは、M&A業界への転職に関してよくある質問をQ&A形式でまとめて紹介していきます。
未経験からでも転職は可能?
M&A業界への転職は未経験からでも可能です。未経験でも、金融知識を持っている人や営業力のある人は積極的に採用する傾向にあります。具体的には、銀行や証券会社、保険会社の営業や大手企業の営業からの未経験の転職が非常に多いです。
金融知識が不十分で転職できるか不安と思っている方も多いかもしれませんが、これらの知識は入社してから身に付けていけば良いため、入社前の必須スキルとしている企業はそう多くありません。
それよりも、M&A業界への転職では営業力が重視されます。新規営業の経験や経営者との商談経験がある人はM&A仲介企業への転職に有利です。
また、M&A仲介企業で求められている人材としては、M&Aについて関心を持っていて役に立ちたいという気持ちのある人が挙げられます。M&A業界のハードワークにやりがいを見出し、成長していくためにはスキルだけでなくモチベーションが大切です。未経験者の転職ではM&A業界で活躍できるだけの気概があるかどうかも重要なポイントの1つです。
M&A業界の求人は学歴不問?
M&A業界の中途採用求人では、必須条件に「大学卒業以上」と記載している企業が多くあります。そのため、高校卒や専門学校卒だと応募できる求人は限られるでしょう。
M&A業界の将来性は?
国内マーケットの成長鈍化に加え、国内の少子高齢化により事業承継の必要性が高まっていることなどから、M&A市場は今後も成長していくと言われています。中小企業の事業承継型M&Aがメジャーになってきたのは最近のことなので、M&A仲介会社の数は需要に対して相対的に少なく、まだまだ成長の見込みがあります。
コロナショックの影響が気になるという方もいるかもしれませんが、深刻な影響はなくM&A業界はいまだ成長を続けています。バブル崩壊やリーマンショックなど、これまでの経済危機では金融市場にもその影響が及び、業界の動きが止まったのに対して、今回のコロナ危機では買収資金を提供する金融機関の融資が続いているため、今後もM&A業界は成長を続けると見込まれています。
M&A業界を経験した後のキャリアは?
M&A業界はトップクラスの収入水準の業界なので、他業界へ転職すると収入が大幅に下がることが多いです。そのため、M&A仲介会社を経験した後のキャリアとしては、同じ業界内でさらに待遇の良い企業への転職や独立が一般的です。
M&A業界のトッププレイヤーの年収は数億円にものぼるため、早期リタイヤを目指す人もいます。また、最近ではM&Aのノウハウをもとに自らが中小企業を承継して、経営者へと転向するケースもあります。
M&A業界は専門性のある知識を幅広く扱うので、どんな業界に転職するにしても有利です。経営者としても役立つスキルが身に付くことから、M&A業界は幅広くキャリアアップを目指せる業界といえます。
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まとめ
少子高齢化による人口減少や経営者の高齢化が問題となっている昨今、事業承継のニーズが高まりM&A業界は市場規模を拡大しています。 M&A業界は国内トップレベルの平均年収を誇っており、転職市場でも人気の業界です。
優秀な人材が求められる業界のため、転職難易度は高いですが未経験でも転職できる可能性はあります。転職で特に重要視されるのは営業力です。会計の基本的なスキルさえあれば専門知識は入社してから強化できるため、面接では営業力を中心にアピールすると良いでしょう。
記事監修者の紹介
粕谷暢司(Yoji Kasuya)
2005年青山学院大学卒業後、新卒で株式会社リクルートに入社 。
人材領域の法人営業を経て、新サービス開発を担当する部署へ。
2つの新サービスの立ち上げを経て2013年にリクルートを卒業後、2014年株式会社サムライソウル設立。
人材業界に20年近く身を置き、1万人以上の次世代を担うビジネスパーソンのキャリアと対峙。
企業の経営陣や事業責任者とのつながりを活かしたリアルで精度が高い情報提供と徹底的な選考対策を得意とする。
【転職支援実績】
・28歳 700万円(100万円アップ)
メガバンク(法人営業)→ メガベンチャー(法人営業)
・27歳 800万円
フィナンシャルアドバイザリー(コンサルタント)→ メガベンチャー(M&A担当)
・31歳 800万円(100万円アップ)
総合コンサルティングファーム(コンサルタント)→ メガベンチャー(事業企画)
・42歳 1600万円(600万円アップ)
Saas企業(セールスマネージャー)→ グローバルHRTech企業(ディレクター)
・37歳 1200+SO(200万アップ)
医療系スタートアップ企業 → WEB系スタートアップ企業(CFO)
・31歳 800万円(100万円アップ)
WEBサービス企業(UI/UXディレクター)→ メガベンチャー(UI/UXディレクター)
・32歳 850万円(50万円アップ)
大手通信企業(営業企画)→ WEB系スタートアップ企業(企画マネージャー)
・28歳 420万円+インセンティブ(-300万、インセンティブ付加)
大手証券会社(法人営業)→ 大手M&A仲介企業(M&Aコンサルタント)