最近よく聞くSaaSって何?注目される背景と種類を解説!
近年、「SaaS」というビジネスモデルが注目されていますが、SaaSとは一体どんなものなのでしょうか。
この記事では、SaaSとは何か、SaaSが注目されるようになった理由、SaaSのメリットデメリットなどを解説していきます。よく間違われるIaaSやPaaS、DaaSとの違いなども詳しくまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
「SaaS」とは?
SaaSは、Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)の略称です。分かりやすく説明すると、インターネット上に存在するソフトウェアやサービスをクラウド上で提供するサービスを指します。
クラウドとは「クラウドコンピューティング」の略称で、パソコンに保存されたデータやアプリケーションではなく、インターネット上でサービスを使用することです。これまでは自分のデバイスにソフトウェアをインストールして使用していましたが、SaaSの登場によって自分のパソコンにインストールしていないソフトも簡単に利用できるようになりました。
また、SaaSは必要な機能だけ使用する、月間の使用量に合わせてプランを選ぶといったことも可能なので、必要な人に必要なサービスを提供しやすいシステムとして人気です。
例としては、オンラインストレージサービスやクラウド会計サービスなどがこれに当たり、さまざまな企業に利用されています。
その結果、近年SaaSの市場規模は拡大の一途をたどっていて、デジタルマーケティングなどの領域を中心に年間成長率は10%を超え、2023年には市場規模約8200億円になるともいわれています。
SaaSが持つ2つの特徴
SaaSには2つの大きな特徴があります。
1つ目は、月額課金のサブスクリプションであることです。ユーザーは必要な機能を必要な分だけ利用可能できるため、無駄がありません。
2つ目は、インターネットがあれば、どこからでもどのような端末からでもアクセス可能という点です。
SaaSはインターネット上で必要な機能を利用するクラウドサービスなので、ダウンロード型のソフトウェアと違って、会社や自宅のPC、タブレット、スマホなど複数のデバイスから使用できます。また、複数人がアクセスして管理・編集するなど、同時並行的な作業もできるため、部署やチーム内でリアルタイムのデータ共有も可能です。
拡大を続けるSaaSの市場規模
2015年段階での全世界のクラウドサービスの市場規模は931億円にものぼり、2021年現在もSaaSを含むクラウドサービス市場は規模を拡大し続けています。SaaSの他にもIaaSやPaaSなどのクラウドサービスが市場規模の拡大に貢献しているようです。
特に、アメリカを中心とするICTグローバル企業の活躍が目覚ましく、この先もこれらの企業が牽引していくと考えられます。
【世界のクラウドサービス市場の売上高推移】
出典:総務省
【世界のクラウドサービス市場における上位20社の市場シェア(2015年)】
出典:総務省
「IaaS」「PaaS」「DaaS」との違い
クラウドサービスにはSaaSの他に、「〇aaS」という名前がついているサービスがいくつかあります。「〇aaS」は「サービスとしての〇」という意味です。
ここでは、「SaaS」と以下の3つの「〇aaS」との違いを解説していきます。
- IaaS(Infrastructure as a Service)
- PaaS(Platform as a Service)
- DaaS(Desktop as a Service)
それぞれの違いや特徴を詳しく見ていきましょう。
IaaS
IaaSとはSaaSの前段階ともいえるもので、ソフトを動かすために必要なCPUやメモリ、ストレージやネットワークなどのインフラ環境を提供するサービスです。SaaSと違ってハードウェアやインフラのみでソフトはないので、IaaSだけでは何もできません。
IaaSの環境下に好きなソフトを入れて使用するため、使用するソフトまで組み込まれているSaaSの方がすぐに使いやすいです。
PaaS
PaaSは、システムの開発領域やプラットフォームの提供がメインです。SaaSやIaaSなどと違って一般ユーザーが使用することは少ないですが、専門的なプログラムなどを構築したりする場合に必要な環境を提供してくれます。
使用したいソフトをWindowsやMacなどいった各種OS上で動かせるようにするサービスを提供してくれます。AWSやMicrosoft Azureなどが代表的な例です。
SaaSではすぐにソフトを使用できますが、PaaSはソフトが作動する環境を提供してくれるだけなので、そのうえでIaaSなどのインフラを整えてから使用する必要があります。
DaaS
DaaSとは、デスクトップ環境をクラウド経由で提供してくれるサービスをいいます。
簡単にいうと、インターネットを活用できる環境があれば、低スペックパソコンでもインターネット上で高スペックパソコンを利用できるようなものです。
いわゆる仮想デスクトップというもので、インターネット上にある別のパソコンと思っていただいて問題ありません。
プロジェクトなどで、皆で情報共有するために同じパソコンを使う際などに利用できます。
SaaSとASPに違いはある?
ASPとは「Application Service Provider」の略称で、 SaaSを提供してくれる会社(プロバイダー)のことを指します。
SaaSはインターネット上で使用できるソフト/アプリケーションサービスを意味しているため、会社そのものを定義するASPとは ニュアンスが若干異なるでしょう。
しかし、最近ではASPの概念にSaaSが上乗せされることもあり、プロバイダーやサービスそのものを指す言葉として重複して使われることも多くなりました。
「SaaS」が注目されるようになった背景
近年ではビジネスモデルとしてSaaSが注目を集めていますが、なぜそんなに注目されるようになったのでしょうか。ここでは、SaaSが広まった理由を3つ解説していきます。
- サブスクリプション型ビジネスの普及
- ベンダー企業と顧客の双方にメリットがある
- IT・インターネットの技術革新
それぞれの理由について、見ていきましょう。
サブスクリプション型ビジネスの普及
サブスクリプション型ビジネスとは、ユーザーが必要なときに必要な分だけ料金を支払って利用するビジネスモデルです。一般的に利用されているサブスクリプションとしては、Amazon Prime VideoやApple Musicなどが伝わりやすいでしょう。
クラウド上でサービスを提供するSaaS事業も、サブスクリプション型ビジネスとなります。
SaaSという用語が使われるようになったのは2006年頃ですが、 その当時と比較するとWEBテクノロジーは驚くほどの進化を遂げました。それにともなって、BtoC・BtoB問わず、さまざまなビジネスがこのサブスクリプションモデルへと移行し、SaaSの市場規模は現在も拡大し続けています。
ベンダー企業と顧客ともにメリットがある
ベンダー企業は、顧客のニーズなどに応じて随時サービスを改善して、最新のバージョンをユーザーに届けられるのがメリットです。顧客からのフィードバックを参考にしながらアップデートすることで、より質の高いサービスを提供できるようになります。
また、常に改善を行って顧客の満足度を高めて継続契約につなげられれば、収益の安定化が見込めます。これによって収益の予測がしやすくなり、長期的な視点に立って事業を運営できるでしょう。
顧客としては、利用したいサービス分だけを契約すれば初期費用を安く抑えられて、オンプレミス型に比べて導入のハードルが下がります。また、随時最新バージョンへアップデートされて最新版を利用できるというのは、ユーザーにとっても大きなメリットです。
IT・インターネットの技術革新
インターネットの利用が当たり前の時代になった今、技術革新によってクラウドサービスが広く提供されるようになりました。若者を中心に、インターネットの利用は当たり前のものとして受け入れられており、日常生活にもなくてはならない存在になっています。
インターネットはビジネスシーンでも活躍しており、高い技術力を持つ企業でなくても、SaaS事業に取り組める環境が整ってきました。また、積極的に研修を行わなくても感覚的にSaaSの各種サービスを利用できるユーザーが増えていることなどから、SaaSを導入する敷居が下がって、 より取り入れやすくなっています.。
SaaSのメリット
ここまでSaaSの特徴や注目されるようになった背景などを紹介しましたが、ではSaaSには具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、SaaSを導入することで得られるメリットを4つ紹介していきます。
- 導入が手軽
- コストが削減できる
- インストールしなくても使える
- 管理の手間が少ない
それでは、SaaSはどんな点が魅力的なのか、1つずつ見ていきましょう。
導入が手軽
以前までは、社内にサーバーやシステムを構築して自社で運用するオンプレミス型が主流でした。しかし、自社サーバーの保有やインフラ構築などが必要なオンプレミス型は導入コストが高く、初期コストが高額というのが大きなデメリットです。システム管理体制を整えられていない企業が導入しようとすると、膨大なコストと時間が必要になるでしょう。
その点、クラウド型のSaaSでは管理画面からアクセスしてサービスを利用するため、アカウント情報さえあればいつでもどこからでも簡単に利用できます。また、複数人で使用する場合にも難しい設定などは必要ないので、企業でも取り入れやすいです。
コストが削減できる
パッケージの購入タイプとは異なり、SaaSは使用する端末ごとにソフトを購入する必要性がありません。そのため、大幅にコストが削減できます。
必要な人数部分のアカウントを用意するだけで使用できて、プロジェクトの終了や急なスタッフの増減、一時的な使用の停止などに臨機応変に対応可能です。
支払い方式も月額制や従量課金制などのタイプがあり、必要な期間に必要なサービスだけ使用するなど、企業での利用方法にあわせて無駄のない契約方法を選択できます。
インストールしなくても使える
導入の手軽さでも触れましたが、インストールをしないで使えるというのは大きなメリットです。
SaaSは使用する端末の性能に影響されません。 端末の種類や性能によってソフトウェアのインストールができないなどの弊害がなく、誰でも必要なソフトウェアのサービスを受けられます。
また、端末が何らかのトラブルに見舞われたとしても、クラウド上に存在するデータが消える心配がありません。パソコンのトラブルによってデータが消えてしまう心配がないという点においても、インストールしなくても使えるSaaSは魅力的です。
管理の手間が少ない
ソフトをインストールして使用する場合、その管理は意外と手間のかかるものです。
しかし、SaaSではセキュリティ対策や新機能の追加などによる最新バージョンへのアップデートを自分で行う必要性がなく、サービスを提供する会社が全て行ってくれます。
管理やメンテナンスだけのために専門のスタッフを雇い入れておく必要性がないため、コストの面でも非常に優秀です。
SaaSのデメリット
ここまではSaaSのメリットについて紹介しましたが、どのようなことにもデメリットは存在するものです。SaaSのデメリットについても解説していくので、メリットとデメリットを合わせて理解しておきましょう。
SaaSのデメリットは以下の3つです。
- カスタマイズがしにくい
- 不正アクセスされる可能性がある
- サーバーの不具合に対応できない
それぞれのデメリットについて、1つずつ紹介していきます。
カスタマイズがしにくい
SaaSの特性上、不特定多数のさまざまな業種の人が使うことを前提として設計されているサービスがほとんどです。そのため、個人や会社ごとの使い方に合わせた専用のカスタマイズなどはほとんどできません。
一部特化タイプもありますが、あくまでその業種や職種に合わせて設計したものであって、個人や会社単位でのカスタマイズは難しいでしょう。
SaaSのサービスを会社に寄せるのではなく、SaaSのサービス内容に寄せて作業や業務の効率化を図っていく必要があります。
不正アクセスされる可能性がある
SaaSでは、IDやパスワードなどを利用手段の入り口と位置づけているため、これらのアカウント情報が漏洩すれば、即座に不正アクセスにつながる可能性が高まります。
さらに、各種セキュリティ対策は全てサービス企業側に一任され、利用者側が何らかの手段を講じることはできません。SaaSサービスを提供している企業側もそれを理解しているため、多くのサービス会社ではセキュリティ対策には重点的に力を入れています。
しかし、万が一のために、社外秘の情報などを取り扱う場合には、注意が必要ということを頭に入れておきましょう。
サーバーの不具合に対応できない
何らかの理由でSaaSのサービス側に不備が発生した場合、サーバーダウンなどの障害が起こる可能性もあります。そうなった場合、端末側からではどうしようもなく、メンテナンスが終わるのを待つしかありません。
その間は作業が滞ってしまいますし、取引先とのやり取りなどに影響が出る可能性も高いでしょう。
不備によるメンテナンスだけではなく、バージョンアップのためのリリースなどでも利用制限がかかることもあるため、注意が必要です。
SaaSの代表例
SaaSと一言でいっても、そのサービスはさまざまです。ここでは、そんなさまざまなSaaSサービスを提供している企業を3社紹介していきます。
- Salesforce
- sansan
- SmartHR
それぞれの会社がどんなサービスを提供しているのかも解説していくので、見ていきましょう。
Salesforce
Salesforceは本社がアメリカのカリフォルニア州にあるクラウドコンピューティング・サービスの会社です。提供しているSaaSサービスは、関係管理(CRM)ソリューションの「Customer 360」や営業支援アプリケーションの「Sales Cloud」などが挙げられます。
セールスやサービス、マーケティングなど、あらゆるニーズに対応しており、営業支援システム(SFA)では日本国内で60.4%のマーケットシェアを誇る人気サービスです。
その他、カスタマーサービス、マーケティングeコマースなど、幅広く提供しています。
sansan
日本に拠点を置く企業で、クラウド名刺サービス「sansan」やクラウド請求書受領サービス「Bill One」などを提供しています。
特にクラウド名刺サービスは全国的に利用されており、法人向け名刺管理サービス業者として導入企業先は7000社以上、シェア率は驚異の82%というビジネス業界で欠かせない存在です。
また、6年連続で名刺管理サービス業者1位を獲得しています。
SmartHR
クラウド人事労務ソフトの「SmartHR」を提供する企業で、労務・人事業務などの効率化を目的としたSaaSに定評があります。
4万社以上に選ばれた労務管理クラウドであり、3年連続シェアNo.1というだけでなく、満足度もNo.1を誇るほどのサービスです。
ペーパレス化を推し進めることで労務担当者の負担を軽減できて、企業側の人件費削減にも貢献しています。
「SaaS」には「Horizonal SaaS」と「Vartical SaaS」の2種類がある
SaaSはサービス内容によって、大きく分けて下記の2種類に分類できます。
- Horizontal SaaS
- Vertical SaaS
2種類のSaaSにはどういった違いがあるのか、それぞれの特徴について解説していきます。
Horizontal SaaS
「Horizontal」は水平を意味し、Horisontal SaaSは、どの業界でも幅広く同じように活用できるサービスです。
このことから、取引先と同じSaaS系ツールを使用していた、転職先でも同じだったということがよくあります。
例としては、勤怠管理ツールやMAツールなどが挙げられ、「人事部向け」「マーケティング部門向け」といった業種・職種ごとのサービスも提供されています。
Vertical SaaS
Vertical SaaSは、水平に展開するHorizontal SaaSとは異なり、垂直方向への展開を意味しています。業界特化型SaaSとも呼ばれ、業界特有の課題を解決することに重きを置かれた特定の業界向けのSaaSです。
例えば、建設業界の施工現場の状況を一括管理するサービスや介護現場の経営業況を一括管理するサービス、医療業界の歯科医院向けの予約管理サービスなどがあります。
問題意識が明確であれば非常に効果を発揮しやすいSaaSです。特性がハッキリとしている古くから続く企業やレガシー業界に風穴を開けるような課題解決も期待されています。
急成長中の「SaaS業界」が求める人材とは?
SaaS事業は市場規模が高まる一方で、IT系に限らず、あらゆる業界やビジネスとの親和性が高いです。
それにともなって人材需要も高まり、実際に、エンジニア、マーケティング、インサイドセールスなど、さまざまな職種で募集が行われています。
では、SaaS業界にはどのような人材が求められているのでしょうか。
まずは、目先の利益ではなく、将来的な利益と持続的な成長を求める投資家的な観点です。今後のテクノロジーの可能性を見出して、それに働きかけることのできる人ともいえます。
また、継続的にサービスを契約してもらうことが重要なSaaS業界では、顧客とコミュニケーションをとって、長期的で良好な信頼関係を築ける人間性も重要です。
さらには、顧客の課題を最大公約数的にまとめ、「自社プロダクトをどう改善すると顧客に喜ばれるのか」を整理して、社内で提案する力も求められます。
つまり、知的好奇心を持って相手の課題解決に取り組み、相手目線に立った誠実な提案ができる人材にとって、チャレンジする価値のある業界といえるでしょう。
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まとめ
SaaSとは、インターネット上に存在するソフトウェアやサービスをクラウド上で提供するサービスです。ソフトウェアを自分のパソコンにインストールしないと使用できなかった従来の方法と違い、パソコンにインストールしなくてもアカウント情報を登録するだけで導入できます。
現在では、自分の使用したい分だけ料金を支払って利用するサブスクリプション型のビジネスモデルが注目されており、サブスクリプション型と同様の手法であるSaaSも需要が高まっている傾向です。
さらに、ベンダー企業と顧客の双方にメリットがあることや、ITやインターネットの技術革新によってどんな企業でも取り入れやすくなったことなどから、SaaSはさまざまな業界で利用されるようになっています。
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