【SaaS企業】フィールドセールスの意味、役割、身に付くスキル、転職に必要な資質を研究する

前回の記事では、「インサイドセールス」についてお伝えしてまいりました。

インサイドセールスのニーズが広まった背景として、「BtoBマーケティングの本格化」「サブスクリプションモデルの台頭」「労働力不足による生産性の低下」の3つの理由がある、とお伝えしました。

今回は、マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセスという「SaaS企業のバリューチェーン構造」の中で、インサイドセールスの次の過程である、「フィールドセールス」について、その意味、役割、SaaS企業で活躍するために必要な力、身につくスキルを解説します。

 

「フィールドセールス」とは何か?その意味を整理する

フィールドセールスとは、インサイドセールスで作り上げた顧客との関係や見込み客の情報を活用し、実際にお客様のもとに出向いて(※例外あり)サービスの提案やクロージング活動をする営業手法をいいます。

(※フィールドセールスは必ず対面して商談を進めるわけではありません。遠隔地など営業経費がかかりすぎる場合はオンライン商談などを行ないます。)

インサイドセールスに対して、外部に出る方法のため「外勤営業」ともいいます。

ただし、従来の「営業」とは少し違いがあります。従来型の「営業」は、リードの獲得からクロージングに至るまで一貫して一人の担当者が行っていました。

フィールドセールスは、基本的に最後の営業訪問やクロージングを主に行います。インサイドセールスが獲得した見込み客情報を活かして、見込み客一人ひとりに対して最適な商品やサービスの提案を行います。

このように営業プロセスを分業して特化することで、効率的に高確率に見込み客に対して最高のソリューションを提供できるのです。

 

営業活動におけるフィールドセールスの位置づけとは?(プロセス分業)

顧客獲得は、主にマーケティングによって見込み顧客の情報を集め、インサイドセールスは有望見込み顧客を育成します。そして最後にフィールドセールスがクロージング(成約)をかけるという流れが一般的です。

 

①マーケティング

マーケティングは顧客獲得の入り口を担い、ターゲットの選定や見込み顧客の創出などを行ないます。

テレビCMやインターネット広告、SNSでの発信、またセミナーやイベントなどによって、ユーザーに自社のサービスを認知させ、また興味・関心を集めます。

 

②インサイドセールス

インサイドセールスでは、マーケティングで獲得した見込み顧客情報のデータベースを分析し、商談が成立する可能性の高い顧客をフィールドセールスに繋げます。

電話やメール、そのほかコミュニケーションツールを駆使してユーザーとコミュニケーションを図り、趣味趣向やニーズをキャッチしながら、見込み顧客の興味・関心をさらに育て、顧客との関係構築を行う中でアポイント獲得につなげていきます。

 

③フィールドセールス

インサイドセールスでピックアップした有望見込み客と実際に商談を行ない、クロージングをかけるのがフィールドセールスです。

企業の営業スタイルやサービスによっては、この対面営業を必要とせず、成約が完結することもあります。

「フィールドセールス」の役割:クロージングに特化

フィールドセールスの役割は、基本的にクロージングです。
インサイドセールスから受け取る情報を活用し、それぞれの顧客が抱えている悩みや課題を見極めた上で商談に望み、サービスの提案を行いクロージングに繋げます。このように最後のクロージングに特化していることが最大の特徴です。

 

フィールドセールスが求めるKPI(重要業績評価指標)は、商談数や受注率、受注数などが挙げられますが、この指標は会社によって大きく異なります。
継続して利用してもらえないと意味をなさないSaaS事業では、「6ヶ月以内の解約は受注に含まない」といった場合も。対して「受注数だけがKPI」という会社もあり、様々なKPIが設定されています。

なお、フィールドセールスは対面での営業活動という特徴柄、詳細で複雑な説明ができ、多少の状況変化に臨機応変に対応できる必要があります。
またフィールドセールスであっても、営業経費の費用対効果について最適化を求められます。割と狭い地域では実訪問をしますが、顧客が遠隔地にある場合にはオンラインを活用することが多いです。

 

フィールドセールスとインサイドセールスの連携のポイント:BANT情報の重要性

インサイドセールスからフィールドセールスに対して顧客情報を渡す際、引き渡しの基準をしっかり定める必要があります。基準をしっかり定めることで高確度のリードだけが引き渡されるため、商談や受注率が向上する可能性が上がります。
ここでいう基準を「BANT情報」といいます。BANT情報とは、顧客の見込み度合いを判断する時にメインで使用する指標で、下記の4つの条件からなります。

 

・Budget(予算)

・Authority(決済権)

・Needs(ニーズ)

・Timeframe(導入時期)

 

これら4つの頭文字を取ってBANTです。
BANT情報に基づきインサイドセールスからフィールドセールスに情報を送りますが、この指標は会社によって異なります。

例えば、「Timeframe基準で半年以内に導入を検討している見込み客」などです。重要なのは、半年といったように具体的な数値で設定されているということです。

 

また、インサイドセールスは「商談の供給弁」といわれることもあります。見込み客の引き渡しの明確な基準がある場合でも、フィールドセールスが業務過多になっている場合は基準を上げて送客数を減らし、逆に時間を持て余している場合は基準を下げて送客数を増やしたりします。

このようにインサイドセールスが商談件数をコントロールすることで、フィールドセールスは適正な商談数で業務することができるのです。

 

ただし、顧客によっては、基準に当てはまらなくても早い段階でフィールドセールスに引き渡す場合があります。特に顧客が大規模企業(エンタープライズ)の場合がこれにあたります。

大規模企業では、サービス導入の意思決定の関わる人が複数いて、導入の意思決定にも時間や手数がかかる傾向があります。
フィールドセールスが大規模企業の担当者やその部署の関係者に最適な提案を続け、育成することで、受注確度を上げるように活動を行います。

 

フィールドセールスにおける「クロージング」の重要性

営業活動においてクロージングとは、「顧客と契約を結ぶこと」を指します。単に契約する場面だけでなく、契約までのアプローチを含めて「クロージング」ということを指すことが多いです。

フィールドセールスにとってクロージングは、最重要業務と言っても過言ではありません。ではクロージングするには、どのような点に気をつけるべきでしょうか。

 

結論からいうと、「契約後の運用フェーズまで先回りして提案してあげることが大切」です。契約後に顧客から出てくることが予想される課題を、お客様の組織状態(サービスの理解度)や文化・風土などを鑑みて、契約前に解消する努力をする必要があります。

その事前の課題解決の努力をせずに契約を結んでしまうと、サービス開始後に顧客の期待との齟齬が出て、契約を更新していただけない可能性がSaaSビジネスでは大いにありえます。

そのため、SaaSビジネスのクロージングは、「受注だけを見据えるのではなく、顧客の社内での運用フェーズについても先に顧客に提案してあげること」が重要です。そうすれば、運用フェーズで安定して契約を継続いただけて、結果的にLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)を向上させることができます。

 

SaaSビジネスの場合、「目の前の売り上げ」よりも「将来のLTV」を見ることのできるセールスの手法が、成果を出すでしょう。
参考文献:SmartHR 宮田昇始のブログ

 

「フィールドセールス」が労働力不足をどう解決するのか?従来の「営業」との違い

従来の「営業」という職種は、見込み顧客を探す、育成する、商談する、クロージングする、という顧客獲得プロセスに全て関与しないといけません。
そのような職種で一人前になるには、身に付けるスキルが多すぎて教育コストがかかります。
「フィールドセールス」だとインサイドセールスから有望な見込み客を引き渡してもらってから商談をスタートさせるので、商談とクロージングに特化できるので一人前になるまでが速く、教育コストを大幅に削減し、労働力不足を解決することができます。

 

SaaS企業の「フィールドセールス」成功のために4つの大切な能力・身に付くスキル

それでは、SaaSのプロダクトを提供している企業のフィールドセールスとして、大切な能力、身に付くスキルはどのようなものがあるのでしょうか?

1.顧客のLTV(ライフタイムバリュー)を総体的に見定められる「マーケティング力」

まず、SaaS企業におけるフィールドセールスでは、基準を達成しないであろう顧客を見定める力が必要となります。

継続契約でコストを回収するSaaS企業では、単に受注数をとってもその顧客がプロダクトやサービスを継続して、顧客のビジネスを成功させ課題を解決できる関係を構築できないとLTVを向上させる長期的な関係を築けません。その長期的な関係をシミュレーションできるマーケティング力が必要です。

 

2.長期的な関係を築くことができない顧客の「断り力」

フィールドセールスは目標の件数を維持しつつ、LTVを向上させる長期的な関係を築くことが難しいと判断した顧客を断る、「断り力」が必要となります。

そのためにはインサイドセールスの段階で、顧客の課題や悩みを把握し、適切に解決できる方法を提案し、その温度感や課題感を適切にフィールドセールスに引き継ぐ必要があります。

3.期待に応え、顧客とのエンゲージメントを高められる「関係性構築能力」

フィールドセールスに限らず、どの工程にも言えることですが、営業活動に必要なのは「顧客の期待を越えられる」ことです。サービスやプロダクトの提案で顧客の心を動かすことが何よりも重要です。

対面で行うフィールドセールスにおいて、この傾向はより強くなります。

深いコミュニケーションで顧客とのエンゲージメントを高められる関係性構築能力が必要となります。

 

4.売り切り商材では身につかない「総合的なサービス提案力」

SaaS企業が他の業種と異なる点は、契約して終わりではない点です。継続して使用してもらうことを見据えた提案が必要なため、通常の営業では得られない総合的なサービス提案力が必要になります。
さらに、「顧客が自社サービスを使って、どのような悩みや課題を解決するのかを具体的にイメージする力」も必要です。継続的に付き合っていくため、相手の課題を具体的にイメージできなければ問題解決ができません。

SaaS企業の「フィールドセールス」に転職するために企業から求められるスキルや資質

フィールドセールスは顧客と対面で営業活動を行います。そのため、相手の考えを即座に汲み取って提案するコミュニケーション能力が必須です。具体的に下記に挙げていきます。
・顧客課題に沿った的を射た提案・プレゼン力=複雑なことを相手のベネフィットになるようにシンプルに伝えられること

・相手のリテラシーに合わせて、自社のプロダクトの良さをシンプルに説明する力

・相手にその場で安心して意思決定していただくための人間力=気持ちいいコミュニケーション

・1を聞いて10を知るような地頭の良さ

・顧客の成功に対してコミットするべく仮説を持って臨む基本の徹底ができること

・信頼感ある見た目・清潔感

・顧客との関係構築力・人間力

・自社のサービスの理解力→自社のサービスについてオタクなまでに何でも知っていること

・業界の理解力→業界の勢力図や、各ライバル会社の強み弱み、自社のユニークポジションを完全に把握していること

・何でも知っている→ちょっとした世間話や世相の話にも高い教養で話についていくことができる

 

SaaS企業でのフィールドセールスに求められる力は以上のようなものです。顧客の悩みや課題を瞬時に読み取り解決し、適切な関係を構築する力を発揮するためには、多方面のアンテナを伸ばして能力開発をする必要があります。

 

SaaS企業のフィールドセールスへの転職はこんな人が向いている

SaaS企業のフィールドセールスへの転職に向いている人はどんな人なのでしょうか?

まず、営業経験のある人は活躍できる可能性が高いです。

今の仕事で売り切りの営業をしていて、「もっと売った後のお客様の成功にコミットしたい」と思っている方は少なくないのではないでしょうか?

 

「SaaS企業のフィールドセールス」は、顧客との長期的な関係を見据えて提案をしていきますので、売った後の成功を考えていく仕事ができますので、キャリアチェンジを検討してみるのはいかがでしょうか。
SaaS企業への転職相談はサムライソウル まで

サムライソウルだからこそできる各SaaS企業への転職サポートがあります。

1.現役SaaS企業在籍者が直接サポート

サムライソウルには、現役SaaS企業の役職者がいます。

各社の文化、求められる資質、具体的な仕事内容などを正確に把握できるため、あなたの経験や今後実現したいことを踏まえ、最適な企業への推薦が可能です。

また、SaaS企業特有の組織体制についても事前に細かくレクチャーすることで面接対策にもなり、高水準の合格率を実現しています。

 

2.インサイドセールスの知識 / 実技を習得できるカリキュラム

どのSaaS企業にも必ず存在する役割「インサイドセールス 」について学べる場を用意しています。

全くの未経験でも、インサイドセールスの意義や目的、最低限必要なマインド / スタンスなどを網羅的に習得できます。

2週間程度のカリキュラムを受講して頂くことで、より合格率は高まります。

 

3.SaaS勉強会の開催

「SaaSを初めて聞いた」「SaaSと最近よく聞くけど実際はよくわからない」という方向けに、定期的にSaaS勉強会を開催しています。

業界動向、市場規模、盛り上がっている領域、各社の特徴、など幅広くお伝えする会です。

勉強会参加後にコンサルタントと直接カジュアル相談も随時行っていますので、是非お気軽に参加してみてください。

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