リクルートがSaaS領域に本格参入。その背景や今後の展開とは
大手人材関連会社で、求人広告やITソリューションも手掛けるリクルートホールディングス。新卒の際にリクルートのサイトを活用して就職活動を行ったという人も多いのではないでしょうか。
しかし、そんな就職や求人に強いとされていたリクルートは近年、従来まで行っていた人材派遣関連に加えて、グローバル化やSaaS領域の展開を促進しています。
本記事では、リクルートが新たに展開しているSaaSの事例や今後の展望を紹介しながら、職種や転職の際のポイントについて解説していきます。
目次
リクルートのSaaS強化の背景
引用:株式会社リクルート
SaaSとは、「Service as a Software」の略で、クラウドサービスとしてインターネット経由で提供されるソフトウェアのことを指します。
リクルートはこれまで、「リクナビ」や「ゼクシィ」などのライフイベントに関わる事業、「じゃらん」や「ホットペッパービューティー」などのライフスタイルに関わる事業でそれぞれサービスを展開していました。しかし、サービスは順調に進んでいるものの、思ったように顧客が伸びなくなっていたのです。
リクルートがSaaSビジネスに注力し始めた背景には、そうした「>各メディアの顧客数が伸びていないことへの恐怖」がありました。株式会社リクルートの北村社長は、売上が伸びているにもかかわらず顧客数は伸びていないことに気付き、顧客数はすでに限界に達しているのではないかと感じたと話しています。
そこで新たに着手したのがSaaSビジネスでした。
リクルートが提供するSaaSソリューション
リクルートは、店舗業務をサポートする「Airレジ」を2013年にリリースしたことを皮切りに、さまざまなAirビジネスを展開しています。
これらのAirビジネスは、店舗の業務・経営支援サービスを包括的に提供しており、店舗のオーナーはAirID一つですべてのAirビジネスツールを使えるのが特徴です。
以下では、Airビジネスについて具体的に紹介していきます。
Air REGI
この「Airレジ」はAirビジネスの中でも最初にリリースしたサービスで、2013年11月にリリース後、1年で登録アカウントは10万を突破、2015年1月には英語版もリリースし、134の国と地域で配信しています。
このサービスは「無料で簡単に使えるPOSアプリ」で、シンプルな設計が特徴です。このアプリでは、会計レジ機能のみならず、売上管理機能や顧客管理機能、飲食店向けの空席管理機能や予約機能なども搭載しており、無料で幅広いサービスを受けられます。
Air PAY
「Air PAY」は、2015年1月に開始したモバイル決済サービスです。
このシステムは、専用のカードリーダーとiPad、もしくはiPhoneがあれば利用を開始できます。2021年11月時点では、VISAやMasterCard、アメリカンエキスプレスなどのクレジットカードだけでなく、SUICAなどの交通系電子マネーの他iD、QuickPayなどの各種電子マネーにも対応しています。
Air PAYも、Airレジ同様に気軽に始められるというのが特徴で、多くの決済手段に対応するオールインワンの決済システムです。
Air WAIT
「AirWAIT」は、2014年11月に開始したサービスで、店舗における客の来店受付から番号券の発券、入店受付までのすべてを管理できる順番待ち管理アプリです。
このアプリでは、iPadを使った簡単な操作で店員1人でも対応できる他、客側もスマホを用いてリアルタイムで待ち時間を確認できます。また、順番が近づくと呼び出しメールでお知らせすることも可能です。
このサービスも無料で利用できるため、店舗側からすると取り入れやすいサービスといえるでしょう。
Air RESERVE
「Air RESERVE」は2014年11月に開始したサービスで、電話予約からネット予約・来店時の次回予約など、店舗におけるすべての予約をクラウド上で一元管理できる予約システムです。
このサービスは24時間予約対応可能で、予約の取りこぼしをなくすだけでなく、お客様の顧客情報や予約情報も瞬時に確認できます。また、簡単に予約情報や今までの利用状況を確認できれば、リピート客に対する接客向上など、さまざまな場面で役に立つでしょう。
基本的に無料で利用できる他、アカウント発行後すぐに利用開始できるのは大きな魅力ですね。
Air SHIFT
「Air SHIFT」は2018年4月に提供が始まったサービスで、シフト管理をオンライン上で一元的に行えるサービスです。
このサービスでは、シフト表と一体になったチャットを用いてスタッフとやり取りができます。そのため、シフト作成だけでなく、急な調整や連絡などもこのサービス一つで完結させることが可能です。
また、スタッフのシフト希望や急な出勤依頼、変更なども同時に反映されるので、変更のミスや連絡漏れを防げます。
Air MATE
「Air MATE」とは、2018年4月に提供が開始したサービスで、飲食店経営に対する包括的なサポートを行う経営アシストアプリです。
このサービスでは、経営計画作成やデータ集計や、店舗現場の状況確認、分析など、さまざまな経営に関するサービスをクラウド上で受けられます。
このサービスは、単にデータ集計などの手間を減らしてくれるだけでなく、売上の動向からメニュー分析や集客分析、注文分析など集計した情報からさまざまな分析を自動で行うことが可能です。
リクルートが意識する「シンプルな」SaaSビジネス
リクルートは、包括的な店舗向けSaaSサービスであるAirビジネスを展開する際に、「これしかできないシンプルな価値」というコンセプトを重視しています。
リクルートの北村社長は、情報過多の時代にこそシンプルな価値が重要だといいます。
「あらゆるサービスが乱立しどれを使ったらいいか分からない中で、ワンストップでシームレスに、必要な機能を必要なだけ使えるようにしたい」という思いは、手軽にさまざまなサービスを受けられるAirビジネスによく表れていますね。
SaaS強化でリクルートはどう変わる?
SaaS領域へ展開したことによって、リクルート社にはどのような影響があるのでしょうか。リクルートの北村社長は、SaaS企業にはならないと述べた上で、これまでのメディアにSaaSを連携させていくとしています。
常に新しいことを追求して変化してきたリクルートだからこそ、新たなSaaSサービスにも順応し、成長していけるのでしょう。今後のリクルートがどのように変わっていくのか。変化に期待できます。
今後のリクルートで求められる人材
SaaS領域への進出などビジネス領域を拡大しているリクルートでは、今後どのような人物が求められるのでしょうか。
リクルートは現在SaaSビジネスを拡大し、それを活用して既存のビジネスを発展させていこうという重要な転換期にあります。この転換期にどのような能力が必要とされているのか、詳しく説明していくので、見ていきましょう。
中長期的な視点を持てる
現在転換期を迎えているリクルートにおいて求められる重要な能力として、中長期的な視点を持てることが挙げられます。
前述のとおり、リクルートは常に変化をし続ける企業です。その中で、新しいサービスがどのように社会に影響を与えるかなど、中長期的な未来を見据えて企画の発案や営業をかけることが非常に重要となっています。
また、顧客に継続的なサービスの利用を求めるSaaSビジネスでは、中長期的な視点を持って顧客に対応することが大切です。サービスを利用してもらえば良いという思考ではなく、サービスの利用を開始してもらった後も長く継続してもらうためにはどうすれば良いかといった考え方が求められるようになるでしょう。
データを分析する能力
リクルートへの就職において必要な能力としては、データを分析する能力があります。このデータ分析能力は、単にデータを分析するだけでなくそれを活用することが大切です。
SaaS事業は顧客中心のビジネスであり、顧客がどのような機能を欲しているか、どのようなサービスを求めているのかを的確に見抜くことがビジネスの成功につながります。
そのためには、顧客の動向から顧客心理を分析しサービスに反映する必要があるため、データ分析能力は非常に重要といえるでしょう。
問題を解決するためのスキル
問題を解決するためのスキルとは、予想外の問題に対してその問題の本質を導き出し解決する能力を指します。
SaaSビジネスは新しいジャンルであるため、マニュアル通りでは通用しないような想定外の問題が発生することは多いでしょう。その中で、その問題の本質はどこにあるのか、その問題にどのように対処すれば良いのかを正確に見極め課題を解決する能力はとても重宝されます。
特に、SaaS事業の戦略部分に関わりたいと考えている方はこの能力を磨くと良いでしょう。
リクルートのSaaS事業に関する職種
リクルートホールディングスは非常に大きな企業であり、職種もさまざまです。その中で、SaaSに関わる職種にはどのようなものがあるのでしょうか。
この代表的な職種としては、以上の2つが挙げられます。
- 事業企画・営業企画
- エンジニア
2つの職種では具体的にどのような仕事をするのか、詳しく説明していきます。
事業企画・営業企画
SaaS領域の事業推進に関わりたい方におすすめの職種が、オープンポジション(事業計画・営業計画)です。
この職種は、「3年以上のビジネス経験を有し、戦略の立案から実施までを経験している方」、「これまでのビジネス経験において、圧倒的な成果を残された方」など応募資格が厳しいです。
しかし、その分戦略立案などやりがいのあるポジションに関われるので、SaaS事業を推進していきたいという方は、ぜひ挑戦してみてください。
エンジニア
SaaS事業の中でも開発に関わりたいという方は、エンジニア職がおすすめです。
エンジニア職は、フロントエンドやバックエンドの開発、iosアプリケーションの開発など幅広いポジションがあります。また、関わることができるプロダクトも、先ほど紹介したAirシリーズだけでなく、不動産仲介サービスのSUUMO、旅行サイトのじゃらんなど幅広いです。
配属先は本人の思考と適正を考慮の上で配属されますが、リクルートはSaaSを活かして既存のメディアが変容する可能性もあるので、Airシリーズ以外でもSaaS事業に関われる可能性は十分あるといえるでしょう。
リクルートへの転職のポイント
リクルートは、SaaS事業を中心に新しくビジネスを展開しており、既存のメディアも変容しようという転換期にある会社です。
そんなリクルートへ転職する際に重要な能力としては、「中長期的な視点を持てる」、「データ分析力」、「問題を解決するためのスキル」の3つが挙げられました。
転職をする際には、この能力をいかにうまく企業へアピールできるかが重要です。
リクルートの企業文化や事業戦略を熟知した上で、自身がそこにフィットする人材であることを積極的に伝えていきましょう。
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まとめ
リクルートは近年、Airレジを中心とした飲食店に対するSaaSビジネスに力を入れており、その規模や業界は今後も拡大していくことが考えられます。
その転換期においてコアとなるリクルートのSaaS事業に関わるには、戦略策定などを行う事業計画・営業計画や、開発を行うエンジニアなどのポジションを狙うと良いでしょう。
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