未経験の業界・職種に転職する際の志望動機・自己PRの考え方
求人案件でよく「未経験可」「未経験者歓迎」という文字を見かけますよね。新しい分野に挑戦したいと考えている人にとっては嬉しいと思える反面、「なぜわざわざ未経験を募集するのか」「経験者が見つかった場合は未経験者は不利になるのでは」と疑問に思う方もいるでしょう。
企業がどういった目的で未経験者を募集しているのか、未経験者に何を求めているのか、を把握しておくことは、志望動機や自己PRを整理する上でも重要なポイントです。今回は、企業が未経験者を募集する理由、企業が未経験の転職者に求めるスキル、未経験の業界や職種に転職する際の志望動機・自己PR書き方について解説します。
目次
企業が未経験者を募集する理由は?
企業が未経験者を積極的に採用する理由の1つとして、「現代の深刻な労働力不足で経験者を採用したくても現実問題として難しい」ことが挙げられます。しかし、労働力不足の背景があるとはいえ、企業はがむしゃらに未経験者に採用枠を広げているわけではありません。
一般的に、企業が中途採用を行う場合は、即戦力として活躍してくれる人材を採用したいと考えています。それにも関わらず未経験者を募集するのは、企業戦略として「未経験者を採用する理由」があるからです。ここでは、その理由を2つ紹介します。
即戦力よりも重視する条件がある
1つ目は、経験者の業界の知見や専門スキルよりも「新しい価値観や斬新な発想力」「企業風土への順応性・柔軟性」の優先度が高い場合です。
同じ業界の経験者同士なら、お互いにやるべきことが分かっているので、業務を効率化できるというメリットがあります。その反面、どうしてもその業界の慣例や先入観による思考や発想のマンネリ化が起こりやすくなるのです。
もちろん将来的な活躍の見込みや自社で育成する価値があることが前提となりますが、未経験者の潜在的な能力や人物像を経験者の即戦力よりも重要視している企業では、敢えて未経験者を募集しています。
経験者・未経験者が分け隔てなく活躍できる
習熟度が低くても業務を遂行できるようなポジションや、未経験でもその企業のルールや仕事の進め方さえ覚えれば問題なく仕事ができるようなビジネスモデル、つまり特段経験者である必要性がない場合には、経験者と未経験者を分け隔てなく採用します。
また、もともと経験者の母数が少なく、かつ自社に求める人材を獲得するのが困難である場合も、応募の条件を未経験者に広げる、もしくは優先する企業も珍しくありません。その理由として、未経験者を専門職として育成したほうが早く、中長期的に見て採用コストを抑えられることなどが挙げられます。
企業が未経験の転職者に求めるスキルとは
未経験の業界・職種への転職活動を成功させるには、「企業が未経験者に何を求めているか」を知ることが重要です。企業によって求める人材は異なりますが、未経験の転職者は、特に「ポータブルスキル(=会社を越えて持ち運べる)」と呼ばれるスキルが求められます。
まずは、下記の図を見てください。
上図はスキルピラミッドと呼ばれ、仕事に必要な能力(スキル)を分類したものです。上から下に行くほど、先天性が高く習得に時間を要する能力となっています。このピラミッドの下段から、各分類を見ていきましょう。
(1) スタンス
スタンスは、「業務に取り掛かる姿勢」「仕事に対する基本的な考え方や価値観」といった、仕事をする上で土台となる部分です。
一般的に、スタンスは20代後半までに知らず知らずのうちに形成されるといわれています。生まれ持った「性格」や個々の「興味・関心」、青年期に至るまでの「環境」、周りの大人の「職業観」、初めて職業に就いた際の「組織風土」などが大きく影響するとされているのです。
就業経験がなく将来的な活躍を期待して採用する新卒採用では、この「スタンス」を特に重視します。
(2) ポータブルスキル
ポータブルスキルは、会社や業界・職種の違いを越えて持ち運べるスキル、つまり業界・職種に関わらず仕事をする上で力を発揮できる能力のことです。
どの業界でもどんな職種でも通用する「共通のスキル」という意味では、「スタンス」にも重なる部分はありますが、「ポータブルスキル」は実際の仕事を通じて身に付け、磨き上げていくスキルと捉えると理解しやすいでしょう。
例えば、ポータブルスキルとして下記のような例が挙げられます。
- 仕事を円滑に進めるための計画力、推進力、行動力
- チームを引っ張っていくための決断力、統率力、説得力
- 新しい分野や事業に前向きに取り組むための順応力、持続力、忍耐力
新卒と違って、転職者は就労経験があることが前提なので、企業は「スタンス」に加えてこの「ポータブルスキル」を転職者の評価基準として重視する傾向があります。
(3) テクニカルスキル
テクニカルスキルは、専門的な知識や技術的なスキルを指し、いわゆる「即戦力」と呼ばれる人材が保有しているものです。経験者採用には、入社後すぐにでも活躍してもらうための「自社に今すぐ必要な知識やスキル」としてテクニカルスキルを求めることが多くあります。
以上の「スタンス」「ポータブルスキル」「テクニカルスキル」のうち、企業が未経験の転職者の採用基準として見ているのは「スタンス」と「ポータブルスキル」です。
前項の「企業が未経験者を採用する目的」でもお話ししたように、未経験者枠を設けている企業は、即戦力(テクニカルスキル)よりも、決断力や判断力、臨機応変に行動できる能力といった「ポータブルスキル」を有する人材を求めています。
これは、そのポジションで必要とされる「テクニカルスキル」は、経験を積むにつれて身に付けられるため、教育をしていけば結果的に「即戦力」化しやすいと考えているのです。
また、「テクニカルスキル」である特定の知識やスキルはいつ取り組み始めても遅すぎることはなく、努力次第では早期に習得することが可能です。語学やプログラミングなど、何のスキルにしても一筋縄ではいきませんが、思考力や価値観などと比べると習得に要する時間は短いといえます。これも企業が「ポータブルスキル」を有する人材を求める理由の一端といえるでしょう。
志望動機は企業が求める人材を把握することが大切
未経験であるかどうかに関わらず、志望動機や自己PRは、「自分が何をアピールしたいのか」ではなく、「企業が何を求めているか」に主軸を置いて作成します。
何を目的に転職活動をし、どういう理由や経緯でその企業を志望しているか、また自分はどういうスタンスやポータブルスキルを持つ人材か、という自己分析が重要です。また、分析した内容をしっかりと言語化して整理することも大切といえます。
しかし、特定の能力がどれだけ優れていても、その能力が企業の求めているものにマッチしなければ、採用にはつながりません。
例えば、1つ1つの業務を慎重にコツコツと進めていくことが求められる企業に、チャレンジ精神や瞬発力のスタンスをアピールしても、企業はその人が活躍できるかどうかを判断できない、あるいは活躍できないと判断してしまうでしょう。
つまり、「企業が転職者に何を求めているか」、「その企業はどういう観点で未経験を対象とした採用活動をしているか」を押さえた上で、転職者はそれに合わせて自分のスタンスやポータブルスキルを適切にアピールしていかなければいけません。
そういった意味では、即戦力人材を求めている求人のほうが、企業が求めているものが分かりやすかったりします。その業界・職種に必要なテクニカルスキルを保有している人材を求めているので、自分がそれに当てはまっているかの判断も簡単です。
一方で、未経験者の採用の場合は、上述の通りスタンスやポータブルスキルが重要視されるため、募集している部署やポジションの業務内容以上に、企業が求めている人物像を正確に捉えることが重要となります。
志望動機を書く際のポイント
それでは、ここからは実際に志望動機を書く際の具体的なポイントを3つ紹介します。
- なぜ未経験の業界に挑戦しようと思ったのかを明確にする
- 転職先の業界に生かせる経験やスキルをアピールする
- 仕事への積極性やキャリアビジョンを具体的に伝える
それぞれ詳しく見ていきましょう。
なぜ未経験の業界に挑戦しようと思ったのかを明確にする
転職するにしても、一般的には全く経験のない業界よりも慣れ親しんだ業界のほうが、楽に次の職場に馴染めるでしょう。未経験の業界に挑戦するにはそれなりにエネルギーが必要で、簡単な選択ではないので、その挑戦の背景にはその人の価値観や大切にするものがよく表れます。
そのため、面接官も候補者のスタンスを把握するという目的で、よくチェックする項目の1つとなっています。挑戦の根拠が曖昧だったり、本当にこの業界のことを理解した上で挑戦したいといっているのかが理解できなければ、「本当にこの人はこの業界に入ってからやっていけるのだろうか」と思われてしまうこともあるでしょう。
自らのスタンスを明確にし、強い意志と根拠を持って業界を志望していることを表現しましょう。
転職先の業界に生かせる経験やスキルをアピールする
次に、ポータブルスキルを上手く表現することが重要です。いくら未経験の業界・職種だとしても、これまでの経験が全く何も生きないほうが珍しいでしょう。自らがやってきたことと志望先の業務内容が重なる部分を探して、アピールすることが大切です。
アピールできる経験やスキルを見つける過程自体が、転職を志望している業界・職種・企業を深く理解することにもつながります。
仕事への積極性やキャリアビジョンを具体的に伝える
1つ目と共通する部分もありますが、スタンスの一部として積極性やキャリアビジョンをアピールしておきましょう。
仕事への積極性はどんな仕事であれ重要なことで、自分の業務内容への積極性自体もそうですし、自分の周囲への理解、手伝うことへの積極性などもビジネスパーソンとしては必要なことです。
また、明確なキャリアビジョンを持っていると、「なぜこの業界なのか」という点も明確になりますし、たとえ未経験であってもちょっとのことで諦めずこの業界でもしっかりやっていける人だという印象を持ってもらいやすいです。
志望動機で書いてはいけない内容は?
志望動機を書く際のポイントについて解説しましたが、逆に志望動機で書いてはいけないこと、避けるべき内容にはどのようなものがあるのでしょうか。
内容が抽象的で具体性がない
これは未経験歓迎の求人に限った話ではありませんが、具体性のない志望動機ほど魅力のないものはありません。具体性がなく抽象的な志望動機は、その人ならではのエピソードや思いが全く詰まっておらず、誰でも書けるものにしか見えません。
特に、企業の採用担当者は何百何千という数の志望動機を見てきています。その中で採用担当者の目にとまり、「この人良いかも」と思ってもらうためには、リアルで分かりやすい具体的なエピソードが求められます。
企業の研修を頼りにしすぎている
未経験だからといって、企業の研修を頼りにしすぎるのも良くありません。「何でも吸収するので厳しいご指導のほどお願いします」というと聞こえはいいですが、裏を返すと厳しい指導がないと吸収できないという風に捉えられてもおかしくないでしょう。
未経験を募集するとはいえ、ビジネスパーソンである以上自立することは重要なことです。企業の研修や、先輩の教えをあてにするのではなく、自ら必要な下調べをして、必要な知識を学び、未経験ではありながらも極限まで即戦力になることを目指すというつもりでいたほうが、当然企業からは重宝されます。
転職理由がネガティブな印象を与える
これも未経験に限った話ではありませんが、ネガティブに見える転職理由をストレートに書きすぎるのは注意しましょう。もちろん嘘を書くのは良くないので本当の理由であるべきですが、その伝わり方・表現には留意が必要です。
例えば、転職理由が会社や上司の愚痴に近い形で聞こえてしまったり、自分の責任を全く考えず会社や他の人の責任に押し付けようとしているニュアンスに受け取られると、「この人はそういう人なんだな」と思われてしまう可能性が高いです。
スタンスが重視される未経験募集だからこそ、その人の価値観が垣間見える転職理由については表現に気を遣いましょう。
未経験者が自己PRでアピールできるポイント
志望動機について理解したところで、次は未経験者が自己PRでアピールすべきポイントを紹介します。
未経験の業界に挑戦するにあたって行っている努力を伝える
まず、その業界に入る準備をしっかり進めていることをアピールしましょう。逆に、いくら未経験歓迎求人であろうと、この準備が自分の中でできていないのであれば、その求人に応募するのは待ったほうが良いです。
未経験の業界に飛び込むのには、それなりにリスクがあります。業界を知らないがゆえに、実際に入ってから「こんなつもりじゃなかった」「思ってたのと違う」というミスマッチが起こる可能性も多々あるります。本当に自分がその業界に入って活躍できるのかを推し測るために、その業界の下調べは十分行っておきましょう。
また、活用できそうな資格があれば資格勉強を始めたり、その業界に身を置く人に直接話を聞いたり、業界の外からでも中の情報を知る方法はたくさんあります。そういった方法でできる限りの準備を進め、その準備自体をアピールすることで自分の本気度を伝えることができるでしょう。
職種による経験以外のところでアピールする
次はポータブルスキルのアピールです。自らのポータブルスキルを的確に捉え、未経験の状態でも何をどのように活用できるかが正確に理解できる人は企業からも重宝されます。
テクニカルスキルを持っている即戦力人材であっても、環境や商材、ターゲットが変わることで、全く力を発揮できなくなってしまうというケースも珍しくありません。
逆に、自らのスキルを抽象化して、あらゆるシーンでどのように生かすかを想定できる人はスキルの再現度が高く、未経験の困難に接しても臆せず動けるでしょう。
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まとめ
この記事では、未経験の業界や職種に転職する際の志望動機・自己PRの考え方を紹介しました。未経験歓迎は誰でも良いという意味ではありません。未経験だからこそ、その業界や職種を経験していなくても持っているスタンスやポータブルスキルが選考時に重要視されます。
転職をする際には、その業界・職種に関する下調べをしっかり行った上で、自分自身がなぜその業界を目指し、自分の何がその業界に貢献できるのかを整理しておきましょう。業界や職種ごとの詳しい転職事情が知りたいといった場合には、お気軽にサムライソウルにご相談ください。